4月。新入社員が入社し、職場に少し緊張感と期待が入り混じる季節です。
しかし同時に、多くの企業で静かに進行する問題があります。
それが新入社員の早期離職です。
厚生労働省のデータでも知られている通り、新卒社員の約3割が3年以内に離職しています。この数字は長年ほとんど変わっていません。
なぜ、これほどまでに同じことが繰り返されるのでしょうか。
問題は「根性」でも「最近の若者」でもない
離職理由としてよく聞く言葉があります。
- 最近の若者は我慢が足りない
- 仕事は見て覚えるもの
- 最初は分からなくて当たり前
しかし、少し引いて考えてみると違和感があります。
今の新入社員は
- 生まれた時からスマホがある
- 検索すれば答えが出る世界で育った
- INPUT → プロセス → OUTPUTが明確な環境に慣れている
そんな世代が、
「聞かないと分からない」
「人によって言うことが違う」
「やってるのを見て覚えろ」
という職場に入ったらどう感じるでしょうか。
昭和型産業に残る「暗黙知」の正体
日本の外貨を稼ぐ中心産業は、今もなお第二次産業(製造業)と、それを支える第三次産業です。
これらの産業は高度成長期から続く現場力によって支えられてきました。
その結果、多くの職場でこうした構造が生まれています。
- ベテランの頭の中にしかない判断基準
- マニュアルは存在するが、更新されていない
- 実際のやり方は人によって違う
これはよく「暗黙知」と呼ばれます。
しかし問題は、高度な職人技ではない業務まで暗黙知になっていることです。
形式知にできない理由は「できない」ではなく「しない」
業務を言語化・整理できない理由として、
- 忙しい
- 時間がない
- 現場が回らなくなる
が挙げられます。
しかし本質は別のところにあります。
言語化すると、属人性が可視化されるからです。
- 誰に依存しているか
- 判断が曖昧な部分はどこか
- 実は大した判断ではない部分
これが見えてしまうことを、無意識に避けているケースは少なくありません。
新入社員が感じている本当の不安
新入社員が敬遠しているのは、厳しさではありません。
- 成長の道筋が見えない
- 正解が分からない
- 何を身につければ評価されるのか不明
つまり、
プロセスがロジカルに見えない
という不安です。
これはRPG(ロールプレイングゲーム)に例えると分かりやすいでしょう。
- 何をすればレベルが上がるのか
- 経験値が貯まっているのか
- 次に進むべき場所はどこか
これが全く見えないゲームを、楽しめる人は多くありません。
DXが進まない会社の共通点
DX(デジタルトランスフォーメーション)はIT導入ではありません。
DXの前提条件は
業務プロセスが整理され、言語化されていること
です。
- 誰が
- 何を判断し
- どの順番で
- どんなアウトプットを出しているのか
これが曖昧な会社では、DXは進みません。
結果として起きるのが、
- 新入社員が辞める
- 残った社員に負荷が集中する
- 中堅・ベテランが疲弊する
- さらに人が辞める
という負のループです。
最終的に行き着くところ
このループが続いた先にあるのは、
- 事業継続の困難
- 技術・ノウハウの断絶
- 事業承継の失敗
です。
これは一部の会社の話ではありません。
今も多くの現場で、静かに進行している現実です。
おわりに:変えるべきは人ではなく構造
新入社員が辞める理由は、能力でも根性でもありません。
問題は、
- 暗黙知に依存した業務
- ロジカルに説明されないプロセス
- 成長が可視化されない構造
にあります。
これに気づき、
- 業務を切り分け
- 言語化し
- 再現できる形にする
ことができた会社から、
- 人が定着し
- DXが進み
- 次の世代に引き継がれていく
のだと考えています。
この問題に気づけるかどうかが、
これからの企業の分かれ道になるでしょう。



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